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木皿泉  【脚本家】

使い込まれた道具を器用に使うのは、まさしく働く人の指だった。
やりなおすことのできない時間を生きてきた人たちの指だった。

奈良美智  【美術家】

日本統治時代を越え、国民党独裁を越え、
そこに今あるそれぞれの日常生活が、僕の心に静かに深く染み入ってくる。

中孝介  【シンガー】

かつて日本統治下にあった台湾。
今もそこに暮らす人々の日常は、家族を思い、自然や先祖に感謝し、
笑顔が溢れ、何処か懐かしく感じる。
どんなに便利な時代になっても、決して失ってはならない大切な事がある。
人と自然が共存し、生きる中にある営みの尊さを感じました

平野久美子  【作家】

酒井充子監督の、『台湾人生』『台湾アイデンティティー』に続く
最新作『台湾萬歳』を、公開前に見せていただいた。
三部作の最終章にあたるという今作品は、
台湾の中でも原住民人口が多い台東県(16部族のうち6部族が住む)の、
北部に位置する成功鎮が舞台に選ばれている。人口は約1万5000人。
日本時代に山から移住させられ、
固有の文化を封印されたアミ族と、漢人系の住民が共生しているコミュニティーだ。
漁師たちが生業とするカジキの突きん棒漁から、年配者が用いる言葉や口ずさむ端唄まで、
戦前に支配者としてやってきた日本人の影が今も日常に沈殿している。
その様子を何人かの登場人物のふだんの生活を軸に、酒井監督は淡々と描いていく。
何の説明も誘導コメントもない。静謐だ。
そのため観客は、かえって人々に寄り添い、見守っていくことができるのかもしれない。
映画が半ばを過ぎるころから、私は、台湾東部の豊醸なる大地が持つ受容力に身をゆだねていた。
言葉や歌にもまさる、沈黙の海原、いにしえの森の神秘性、明け方の甘美な雲の色彩と光……
台湾の自然は、過酷な歴史も異民族の去来も人生の悲喜こもごもも、何もかも受け入れてきたのだ。
母のように見守る大地で、人々はまるで嵐の後の静けさをたたえたような顔で営みを紡いでいる。
このたくましさとやさしさこそが、台湾の人生であり、台湾人としてのアイデンティティーであろう。
まさに「台湾萬歳」だ。魂の安らぎを覚える作品だった。

ホァン・ミンチェン  【映画監督『湾生回家』】

ドキュメンタリー映画『台湾萬歳』は、台東にある有名な港「成功」の地を舞台に、
ゆっくりと海の漁師と山の狩人という主人公へ接近していく。彼らは日本語が話せるため、
すぐに台湾と日本の歴史的なつながりを追っていることに気づく。
劇中、とても感動したのは、台湾の素晴らしい景色が映し出されていたことだ。
台湾にいる私自身、ふるさと特有の美しさを意識していなかったことに気づかされた。
また、監督に聞いてみたいことがいくつかある。なぜ15年もかけて台湾を撮ったのか。
台湾とそんなにも縁があったのはどうしてなのか。そんなにも台湾が好きなのはなぜか……
複雑な歴史的背景を持つ台湾には、はっきりと説明できないことが多く、
簡単に政治的な地雷を踏んでしまうのだから、監督の苦労は察するにあまりある。
一貫して台湾を撮り続ける監督に対し、大いなる感動と深い関心を覚えるとともに、
最高の敬意を表する。