Cast&Staff

出演者

張旺仔さん(85 歳)
台東縣成功鎮在住 元カジキ漁・漁師

1931年8月23日、台湾の最南端の恒春半島で10人兄弟の9番目として生まれる。妻と長 男夫婦との4人暮らし。人より遅く9歳から公学校(のちに国民学校)に通い始める。2年生の 途中、いまの台東縣成功鎮に引っ越す。戦争末期には空襲もあり、機銃掃射を間近で見た。 14歳、国民学校を卒業する年に戦争終結。19歳から兄と一緒にカジキ漁船に乗り、船長にな ることを目標に経験を積んだ。30歳で念願のカジキ漁船の船長に。49歳に病気で引退するま でカジキ一筋。突きん棒漁という伝統漁法で、長いモリを持って船の突端に立ち、獲物めがけ て振り下ろす。現在は、畑仕事が日課で、芋、バナナ、木瓜(パパイヤ)などを作っている。午 後には海に行き、その日の漁から戻ってきた船が着き、次々と魚が降ろされる様子を眺めるのが楽しみ。台湾は夫婦別姓のため奥様は李さん。「典子」の名前は父親の日本人の友人がつけてくれた。張さんが漁で獲ってきた魚を美味しく調理し食卓に並べるのが典子さんの役目だった。

オヤウさん(許功賜、69 歳)/オヤウ・アコさん(潘春連、62 歳)
台東縣成功鎮在住 カジキ突きん棒漁師夫妻

成功漁港を拠点にいまもカジキの突きん棒漁を営むアミ族の夫婦。オヤウさんは張旺仔さんの兄の船で修行を積んだ。彼の姿は現役時代、名船長として名を馳せた張の姿を彷彿させる。カジキの時期が終わると、トビウオやシイラを獲る。海とは切っても切り離せない生活。アミ族はかつての「新港」漁港の築港の際、労働力として駆り出された。アコさんの叔父は戦前、村を代表して日本を訪れた秀才だったが、戦後、国民党軍に徴兵され、中国大陸で43年間も過ごすことになった。

ブヌン族名:Sinsin Istandaさん 通称:カトゥ(柯俊雄、41歳)
台東縣延平郷在住 中学校の歴史教師&シンガーソングライター

1974年3月4日、台東縣延平郷桃源村にパイワン族の父とブヌン族の母の間に生まれる。通称のカトゥは祖父の日本名が加藤四郎だったことから。ブヌン族の伝統的な狩りをいまも続ける。戦後中国からやってきた国民党の老兵の孤独を歌った歌を作った。雑貨店を営む老兵が、二胡を引きながら商品を売る様子を描いた。子供のころ、桃源村にあった商店7軒のうち6軒が老兵の店だった。

ブヌン族名:Mulas Takiludun ムラス・タキルダンさん(王古夏妹、89歳)
日本名:きよこ 台東縣延平郷在住

日本統治時代、もともと住んでいた高地の村から強制的に移住させられ、いまの場所に暮らすようになったブヌン族の一人。移住経験者の数少ない証言者。地元のお年寄りから聞き取りをしているカトゥさんが、移住当時の話を聞きに行った。両親は移住をいやがっていたが、どうすることもできなかった。移住後はかつて住んでいた村に一度も帰ったことがない。自分たちの土地を守ってほしいと訴える。

ブヌン族名:Dahu Istanda-Husungan ダフさん(胡榮茂、41歳)

カトゥさんと共に伝統である狩りを大切にしているブヌン族。狩りに行く際噛んでいたのは噛みたばこ。撮影隊が同行した狩りで、一発でキョンを仕留めた凄腕の持ち主。

スタッフ

【監督】 酒井充子 Sakai Atsuko

1969年、山口県周南市生まれ。大学卒業後、メーカー勤務ののち新聞記者となる。98年夏、蔡明亮監督の『愛情萬歳』(94)を見て、舞台となっていた台北を初めて訪れる。映画のロケ地巡り気分で行った侯孝賢監督『悲情城市』(89)の撮影地、九份のバス停で、見知らぬおじいさんに流暢な日本語で話しかけられ、日本人教師の思い出を聞いたのをきっかけに台湾への興味を深めた。2000年、「台湾の映画を作る」と決意し映画の世界に入り、02年、台湾取材を始める。台湾の日本語世代が日本への様々な思いを語る初監督作品『台湾人生』が09年に公開された。以後、『空を拓く-建築家・郭茂林という男』(13)、『台湾アイデンティティー』(13)、『ふたつの祖国、ひとつの愛-イ・ジュンソプの妻-』(14)を制作。今回初めて外洋で漁船に乗るという経験をし、あまりのきつさに一瞬後悔するも、乗船を重ねるうち船上で食事ができるほどに。ブヌンの森では、険しい道をズンズン進んでいく登場人物たちの後ろを必死で追いかけた。これまでの5作品で一番体力を必要とする撮影となった。著書に「台湾人生」(10 年、文藝春秋)がある。現在、故郷・周南市と台東縣の懸け橋となるべく奮闘中。

【撮影】 松根広隆 Matsune Hirotaka

1970年、神奈川県生まれ。92年日本映画学校 (現日本映画大学)卒業。ドキュメンタリーを中心にフリーのカメラマンとして映画やテレビなどで活動中。主な撮影作品。寺田靖範監督『妻はフィリピーナ』(94)、橋本信一監督『掘るまいか』(03) 『1000年の山古志』(09)、押田興将監督『39窃盗団』(12)、酒井充子監督『台湾人生』(09)『台湾アイデンティティー』(13)、小林茂監督『風の波紋』(16)の撮影により日本映画撮影監督協会第24回JSC賞を受賞。本作は受賞後第一作目となる。

【録音・編集・整音】 川上拓也 Kawakami Takuya

1984年、北海道生まれ。エンジニア職を退職後、2010年度映画美学校ドキュメンタリーコースを受講。NHKドキュメンタリー番組の編集助手を経た後、現在はフリーの録音・編集としてドキュメンタリー作品を中心に活動。酒井充子監督『ふたつの祖国、ひとつの愛イ・ジュンソプの妻』(14)、小林茂監督『風の波紋』(15)に録音として参加。整音担当作品に、田中圭監督『桜の樹の下』(15)、小森はるか監督『息の跡』(17)など。

【音楽】 廣木光一 Hiroki Koichi

神奈川県生まれ。ギタリスト・作曲家。音楽家はいない家系に育つも祖父と伯父の影響でジャズ、クラシック、マーチ、ラテン、邦楽など様々な音楽を耳にした。ロックに夢中になった中学時代、急転報道写真家に憧れベトナムに行くつもりになる。18才、自分に最も合う表現方法は幼き頃に聴いたジャズだと思い込む。遅いスタートでもできそうな楽器はとなんの根拠もなくギターを選ぶ。日本が好景気に向かう時代のどさくさに紛れ生業と。…歳を重ね、つくづく弦楽器で良かったと思っている今日この頃。

音楽歴
1975年、自己のグループを作りオリジナル曲を中心に演奏活動開始。古澤良治郎(ds)、渋谷毅(p)、リーオスカー(harm)、坂田明(as)を始め多くのグループに参加。2017年現在、アコースティックソロギターから、エレクトリックギター、エレクトリックベースを弾くバンドなど、全国のライブハウスで活動中。ジャズギタリスト高柳昌行(91年没)に師事。CDは全曲オリジナル 作品集『 músicas(ムジカス)/廣木光一(BIYUYA007)/14年』他。廣木光一音楽塾主宰。

映画歴
酒井充子監督の4作品『台湾人生』(08)『台湾アイデンティティー』(13)『ふたつの祖国、ひとつの愛-イ・ジュンソプの妻-』(14)本作で作曲と演奏。